第10章 thought ■
「あいつは認めたんだよ。
傷害罪で起訴されて有罪が確定すると15年以下の懲役又は50万円以下の罰金。それに加えあいつは確実に強制わいせつに値するだろ?そしたら、」
「なぁでもさ、この場合は、準強制わいせつの方に入らないか?加害者のそいつがどう認めてるか、どう示談に持ち込むか分からんが、こちら側はここらへんハッキリさせといたほうがいいぞ。」
刑法第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする。
刑法第178条第1項(準強制わいせつ)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,わいせつな行為をした者は,第百七十六条の例による。
「…どっちにしろ法定刑はおんなじだろ。
6月以上10年以下の懲役。全く曖昧すぎるけどな。」
俺がそう言ってタバコに火をつけると、
夏樹が心底嫌そうな顔をして黒縁のメガネを中指で押さえた。
「おい、お前はホストだから問題ないかもしれんが、俺のスーツに匂いが着くのは嫌なんだが。」
「ん。大丈夫大丈夫。臭い消しいっぱいあるよ。
あ、そーだ。使ってないシャネルの香水やるよ。レオナが言うには、その香水がその及川ってやつと一緒らしくてさぁ」
「…いらねぇよ。んで俺がそいつと同じのを…」
「良い香りだよ?女にモテるよ。」
「…お前くらいモテるならもらってやるよ」
やれやれといった顔をしている夏樹にお構い無しに俺はタバコを蒸す。