第10章 thought ■
ー龍也sideー
2日後。
「よお。相変わらず色男だな隼人
元気そ〜じゃん」
久しぶりに聞く俺の本名。
「夏樹。久しぶりだな。来てくれてありがと」
「いいやぜんっぜん。仕事だしこれ。」
夏樹を部屋に招き入れる。
こいつは俺の大学時代の法学部同期。
こいつは俺と違ってちゃんと卒業して司法試験も1発で合格して、今では親の弁護士事務所で働いてる立派な弁護士。
顔つき的にちょっとヤク…いや、チンピラっぽく見えるけど。
ホストになりたての頃、俺がストーカー被害に遭って、その女とトラブって相談したときもこいつがなんとかしてくれた。
で、会うのは約3年ぶり。
「……へえ。本来なら強制わいせつ罪と、睡眠薬と妙薬を強制投飲てことで傷害罪も加わるかな。でもお前も知ってると思うけど、そういった場合の傷害罪は、"他人の生理的機能に障害を与える"って結果が生じなければ傷害罪にならない。…彼女はどんな様子だったんだ?」
「意識障害起こしてたよ明らかに!
これは"無形的方法"にあたる傷害罪だろ。」
「でも彼女、自分で電話してきたんだよな?お前が見つけた時は喋れてもいたみたいだしな…。しかも最初は彼女も諦めて無抵抗で受け入れてたみたいだし…そこらへんを警察の方も考慮してるわけだろ。」
「だからぁ、無理やり受け入れさせられたの!抵抗できなかったの!そのくらい安易に想像つくだろ!」
「んー…。ちなみに分かってると思うけど、お前のその男に対する暴行は"有形的方法"での立派な傷害罪だよ。」
「わかってるし。つかそれも含めて示談にしたいみたいだし。ともかく彼女に納得のいくようにやってくれよ。」
暴行などの有形的方法での傷害については、暴行の故意があれば故意が認められるとされてるけど、無形的方法の場合は、傷害を負わせてやろうという傷害の故意が必要となる。