第10章 thought ■
龍ちゃんは気がついたように
体を起こし、気まずそうに口に手を当て目を逸らした。
「……ごめん…俺何やってんだろ…
シャワー浴びてくる…」
向こうに行こうとする腕を、私は瞬時に掴んだ。
彼は慌てたようによろけてまた私に覆い被さる。
「…ばか!遅いよ…
帰ってくるの…遅い…!」
バンバンと彼の胸を叩く。
彼は、眉を寄せ、痛みに耐えるような刹那気な表情をした。
「ごめん…ね…」
「私がっ…どんな思いで…待ってたと思って…」
「うん…」
その悲痛に満ちた表情が
私の中の感情を増幅させて
一気に涙が溢れてきた。
「ばか…ぁ…なんで…っ…
あんなやつっ…殴ったりしたの…っ
手を出すなって、自分であんなにっ…
言っときながらっ…さぁっ!…ぅぅ」
「…うん」
わかってる。
わかってるよ。
うん、しか言えないんだよね
あなたがすごくすごく
どこまでも優しい…から…