第10章 thought ■
ピンポーン
「っっ!!」
突然のチャイムの音に、
心臓が跳ね上がりそうになった。
慌てて廊下を歩いていく。
脚がもつれそうになりながらドアを開けた。
「りゅっ…ちゃっ……」
僅かにクマの張り付いた目で
笑っている龍ちゃんがそこにはいた。
「ただいま…ごめん、録音の記録とかでスマホの電源切れちゃっててさ、だから…っ…!」
言葉を遮って瞬時に飛びついた。
スーツから香るいつもの彼の香りは
もうなかった。
驚いたように一瞬強ばっていた彼だったが、
すぐにギュッと抱き締め返してくれた。
強く、強く。
私もこれでもかというほど強く
その体に縋りついた。
はぁー…と龍ちゃんの吐息が耳にかかる。
「… レオナ……ただいま…」
優しく囁くその声も。
「おか…えり……っ…ばか…」
「…ふっ……ごめんな…」
そのまま中に入って、ドアを閉めると、
龍ちゃんは私を抱えあげ、部屋の奥へと進んで行った。