第9章 resist
ー龍也sideー
俺の仕事に支障が出ないようにと庇ってレオナが酷い目に遭った。
そんなことを利用して、利用された。
俺のちっぽけなプライドを守るために
こんな状況になってまで…
それでもレオナが言わないつもりでいたなんて…
こんなに己自身を呪ったことは無い。
全部俺のせいだ。
俺が…あの時ダーツバーに無理に行かなければ。
俺が…あいつを煽るような真似しなければ。
俺が…ちゃんとレオナに忠告していれば。
俺が… レオナを外に連れ出さなければ。
俺が…ヤマトくんを引き入れなければ。
俺が……
俺が……
そもそもホストじゃなければ…
「告訴する」
全員の驚いた目がこちらを向いたのがわかる。
俺は大学で法学部だったから分かってる。
被害届が単に犯罪の被害を申告する書類であるのに対し、
告訴には被害の申告だけでなく、加害者の処罰を求める意思表示が含まれる。
告訴はこの意思を尊重する手続きだから警察が告訴状を受理すると捜査義務が発生する。
一方、被害届が提出されても、警察に捜査をする義務までは発生しないから本当に捜査解決までいくか信用ができない。
「告訴できるのは、刑事訴訟法第230条~234条に定められた人だけだ。
被害者本人や被害者の法定代理人、被害者が死亡した場合における被害者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹などが該当…
だから現時点ではレオナしかいない。告訴しろ」
「え…龍ちゃ…」
狼狽えた表情を見せるレオナは、俺の本気の雰囲気に気がついたのか、意を決したように小さく頷いた。