第8章 cruelty ■
ー龍也sideー
ダーツバーで初めて会ったあん時から、あの及川とかいう男。
どこか気持ちの悪い奴だと思ってたんだ。
整った顔立ちに上品な態度。
その上、若社長で金持ちなんて、明らかに女に困らないであろう色男なのに、妙にレオナに執着している感じだった。
はぁ…もっとレオナに警戒させとくんだった。
ていうか、俺もあいつの名刺持ってんだよね。
押しかけて行くのは簡単だ。
でもそこで俺は、自分が何をしてしまうかわかっているから躊躇してしまう。
社会的地位と信用のあるあの男の方が
きっと1枚も2枚も うわてだろう。
俺の事なんか
どうにでもできそうだ。
となったら、
やっぱり手段は1つしかない。
「なぁレオナ。
警察に被害届出そう。」
「・・・」
レオナは黙っている。
店や周囲に変な噂がたつのを恐れているのかもしれない。
「大丈夫だよレオナ。
おかしなことにならないように、サポートするから。」
「・・・」
「ね?」
不安げな表情で目を逸らすレオナの頬を撫でてなるべく優しく笑った。
内心俺は頭が爆発しそうなくらいムカついている。
でも今彼女の前では懸命にそれを押さえ込んだ。