第8章 cruelty ■
丁寧に体を拭いてくれて、
服を着せてくれた。
その間、私には羞恥という感情が不思議となかった。
いつも1番近くにいてくれる人だからかな
私は初めて気づいた気がした。
私が1番安心できるのって、
彼と一緒にいるときなのだと。
私はまだ体に力が入らない。
震えていて、足もガクガクする。
火照った身体がとにかく熱い。
やっちゃんは、男の名前を聞いていきり立っている。
「あいつ…許さない…
いつも送る時あいつ最寄り駅まででいいって言うから家は分からないし…はぁ…くそ…っ…あぁ、そうだ、
レオナさんあいつの名刺持ってるでしょう?
貸してください!」
「ヤマトくん、ちょっと待ちなよ。
何する気だ?」
「そんなの決まってるじゃないですか!
行って、社員の前で悪事をばらして1発殴ってくるんですよ!」
「証拠がない中そんなこといきなりしたら君が悪者になるよ。ちゃんと考えてくれ。」
「じゃあどうするっていうんですか?!」
龍ちゃんは椅子に座って私を抱き抱えたまま考えている。
「やっちゃん…龍ちゃん…
もう…いいよ…なかったことに…して…
私、最初は諦めて、抵抗しなかったし……」
2人は目を見開いて私を凝視した。
「だとしても!これは明らかに強引なやり口ですよ!」
「そうだよレオナ。許しちゃダメだ」
「…でも…もう…いいよ……なかったことに」
「んなことできるわけないだろ。
あの男…絶対にまた調子に乗って同じことしようとするはずだ。」
龍ちゃんの体が震えているのが直に伝わってきていた。
それが私は、自分の痛みよりも苦しかった。