第8章 cruelty ■
「… レオナ…なぁ…
相手は…篠崎社長って奴?」
レオナは首を振った。
…違うのか?
「じゃあ…誰?」
「なん…で…」
「…??」
震える唇が一生懸命何かを言っている。
俺は一旦シャワーをとめて耳をすませた。
腕の中で、レオナの体も小刻みに震えている。
「なんで…龍ちゃ…が……いるの…」
俺はフッと笑った。
「そりゃあ、すぐに駆けつけてきたからでしょ」
「なっ…でよ…」
レオナは顔を歪めて泣き出した。
「… レオナがSOS出してる時に、
悠長にアフターなんかしてるわけないだろ。」
俺はボディソープを泡立ててレオナの裸体を丁寧に洗っていく。
こんな状況でもちろん変な気なんて起きない。
ただ…
柔らかくて…スベスベで…
「綺麗だな…」
思わずその本音が漏れてしまった。
「っ…綺麗じゃ…ないっ…汚れて…る…」
レオナのとめどなく流れる涙をそっと指で拭う。
目と鼻の先で笑って言ってやった。
「綺麗だよ。全部…綺麗だ。どこも汚れてなんかないさ…」
そう言って、額に唇を寄せた。