第8章 cruelty ■
及川さんはぐったりと力尽きている私をギュッと抱きしめた。
「あぁ…愛してるよレオナ…本当に…
ねぇ僕と結婚しよ?…君の身も心も…もう全部…僕のものにしたい…僕だけのものに…」
そう言って深く口付けをし、ゆっくりと離れた。
「本当に綺麗だ…非の打ち所がないよ…
正しく僕に相応しくて…君以上の子はどこ探してもいないね…あぁ、妻として連れて歩きたいなぁ。周りに見せびらかしたい…それで、羨慕の眼差しを浴びたいよねぇ…もっと、もっと…ね…」
私の髪を愛でるように撫で、顔中に何度もキスを落としてから、勝手にシャワーを浴び、また連絡するね?と言って勝手に出ていった。
ようやく……
ようやく終わっ…た……
解放された……
そう思ったら、自然と涙が溢れては流れていった。
もう何も考えられなくなっていた。
それでもここから出たいという意思だけが己をつなぎ止めている。
私は飲まされた妙薬のような薬のせいで意識がまだ朦朧としていたが、震える四肢をなんとか動かして、バッグからスマホを取りだした。
大量のメールやLINEなどは無視して
まず誰かに助けを求めようと思い悩む。
このままだと、多分1人で帰れない。
時間的にも、きっとあの子なら手が空いている…はず…
もし空いてなかったら仕方ないから私の身体が言うこと聞くまで1人でここにいる。
僅かに残っている理性でそれだけ決心し、
やっちゃんに電話をかけた。
3コール目。
割とすぐにでてくれた。
あ、やっぱり仕事終わってたんだ…よかった…