第1章 desire
「もーいいじゃん。そろそろ身体で」
何食わぬ顔でそう言い、タバコに火をつけようとしたので私もタバコを咥えた。
龍ちゃんは気がついたように私を見て、自分より先に私のタバコに火をつけてくれた。
ちなみに彼も私もタバコを吸うのは二人でいる時だけ。
私は煙を吐きながら足を組んだ。
「ふーーーっ…身体ねぇ。
ぶっちゃけまだ引っ張りたいんだよね…あと少し。
あーいう感じのオッサンはつけ上がるタイプなんだよ」
そんな客は、ごまんといて、
新人時代なんてとくに大変な目に遭ってきた。
「ふーーーっ…かなぁ?
聞く限りだとそんなふうにも思わねぇけど…
つかぶっちゃけレオナなら身体開けた時点でもう相手は二度と離れられなくなると思う」
龍也はこれも自分のことのように
真剣に聞いてくれている。
テキトーそうに見えるけど、龍也に助けられたことは何度もある。
伊達に夜の帝王じゃないのだ。
こう見えて、頭の回転がものすごく早くて本当にしっかりしている。
少し天然ぽいところもあるけど。
「…それは…どーかな。」
「ぶっちゃけ今までだってそうだったろ」
「ぶっちゃけぶっちゃけうるさいな」
「初めに言い出したんはそっちだろ」
私たちはタバコを咥えたまま同時に笑った。
仕事の話をしているはずなのに
二人でいると、まるでふざけているかのように笑顔になることが多かった。
「ぶっちゃけ私はねぇ、今まで身体開けたのはたった3人!3人だよ?あんたとは大違い」
「ぶっちゃけ俺は5人だよ?変わんねぇだろ、
つーか、身体開いてる時点で五十歩百歩。」
「……確かに」
「…だろ。」
また同時に笑って同時にお互いの顔に向けて煙を吐いた。
こんなぶっちゃけ話ができるのだって
彼だけだ。
今ではもう、仕事に関してのお互いのことはほとんど分かっている。
仕事の部分だけだけど。