第1章 desire
「はぁーごめん。お待たせ。」
「ん。機嫌取れたみたいでよかったじゃん。」
「ね。レオナのおかげだわ。でも多分放っといても俺のことしか眼中にないから平気だったとは思うけどね」
確かにそうかもしれない。
でも客だって人間だ。
むしろ、最も人間らしい人間とも言える。
そういう慢心が、逆に命取りになることを
私はよく知っているから、あえて彼を睨む。
「女は男よりストーカーになりやすいんだよ。思わぬ所でこじれて足を掬われかねないの。知ってるでしょ?」
「うん、わかってるわかってる。ホストになってからここ3年で少なくとも10回は経験済み。」
「なら小心の注意を払いなよ。最悪後ろから刺されるよ」
「ううっそれだけはやだなぁ〜」
「そうなっても私、きっと助けられないし、お見舞いにすら行けないんだから。」
私たちの仲は夜の世界で知られるわけにはいかない。
お互いの客たちに与える影響だって大きいし当然良くはない。
「はぁ…ですねぇ。
まぁそんなことにはならないと思うけどね。
で、レオナは?今日はどうだったのー?」
「あー今日ね、篠崎さんが300万落とした。」
「っえ!マジ〜?おめでとう〜パチパチパチ〜♪
てかその人やばいね、こないだも一瞬で200万すってたんでしょ」
「うん、でもそろそろ見返りを求められるだろうから。定期的にあげてんだけどねぇ、あー今回はどうしよう?」
自分のことのように喜んでくれる龍也は、
終始ニコニコ顔で上機嫌だ。