第8章 cruelty ■
そのときハッとしたようにヤマトくんがスマホを取り出した。
バイブ音が鳴っているらしい。
「あ… レオナさんだ!」
「ははっ。レオナの奴、心配性だねぇ。
ほんっと君のこと可愛いんだなぁあいつ…
無事報告をしてあげな〜。」
「はいっ。失礼します…」
ヤマトくんが電話に出た。
「レオナさんお疲れ様です!僕今終わったとこなんですけどレオナさんもですか?…… はい、龍也さんや皆さんのおかげでなんとか!……レオナさん?……あれ…??…あのっ…え?…は…はい?…ちょ…と……だ、だいじょっ…えぇっ…今どこに!」
俺は踵を返そうとしていたが立ち止まり、
その対応に耳を潜めた。
ヤマトくんはみるみる不安の表情を滾らせ、
たちまち顔面蒼白になっていく。
「…大丈夫か?まさかまた酔っ払ってんのあいつ?」
「…… レオナさっ…いいますぐに行きますからそこに居てください!いいですね?!」
電話を切ったヤマトくんはすぐに店を出ようとした。
その腕を俺は掴む。
「ちょっと待ちなよ、どうしたの?」
「な、なんでもっ…
僕タクシーで帰るんで送迎いらないです!」
「なんでもないわけないでしょう?そんな焦って只事じゃないことなんて見りゃ分かるよ?何があった?」
「離してくださ!と、とにかく急がないとっ」
俺はヤマトくんの肩に手を置いた。