第8章 cruelty ■
「えぇ〜っ!ヤマトくん今日限りなの?!
ねぇ嘘でしょ〜っ!」
そんな黄色い女の声が聞こえてきた。
チラと視線だけ向けると、ヤマトくんは悩ましく笑っている。
「じゃあ連絡先交換しましょうよ!」
「ヤマトくん私もっ♪」
「え…あ…ででも」
「いいじゃないお姉さんたちと遊びましょ?」
「行きたいとこ連れてってあげる♡」
俺は突っ立っているボーイを見やった。
目が合ったボーイは俺の意を察してか、すぐに体の空いている別のホストを連れてヤマトくんの卓へ付けた。
「失礼いたします。真斗です。
はははっ、朱美さん〜久しぶりですー!ヤマトくんを困らせないでくださいよ〜!それにまだこの店で働かないとは決めてないからまた会えるかもですよ?ねぇ、ヤマトくん?」
「あはは。はい。」
「え?ほんとに〜?
また会いたいなぁ〜♡ねぇ名刺はぁ?」
「ヤマトくんはまだホストってわけじゃないから名刺は持ってないよ。そんなに彼を気に入っちゃいましたー?」
「うんだって超〜かわいいじゃん〜♡」
「いじりがいがあるの〜♡さっきなんて…」
やはりSっ気のある客や世話焼きの客、母性本能の強い歳上の客を虜にするようだ。
あぁ。ヤマトくんいいなぁ、貴重だな。
是非このままうちの店で働いてくれる意を決めてくれればいいけど。
でも、その穢れのない白を黒に染めていくのはいくら俺でもなかなか酷だね。