第8章 cruelty ■
「ところでさぁ、レオナちゃん。
こないだダーツバーで会ったホスト君いたろ?
確か…龍也くんて子。」
カクテルから口を離した私に、及川さんが整った顔を向けてくる。
「…うん?その子がどうかしたの?」
「こないだ君と一緒にいる所を見かけたよ」
「えっ…」
私が目を見開いてグラスを置くと、
及川さんはハハッと笑って続けた。
「実はあの日、たまたま時間が取れたから、レオナちゃんの店に行ったんだよ。でも君が体調不良で店を休んでるなんて聞いたからびっくりしちゃって。で、レオナちゃんのマンションに行ったんだよね。そしたらあの龍也ってホストと君が仲睦まじくそのマンションに入ってくじゃない?いやぁ、驚いたよねぇ、まさか一緒に住んでるの?やっぱり付き合ってたんだ?あん時から思ってたんだけど、僕の目ってやっぱすごいなぁ…自分で言うのもなんだけど。まぁだから仕事で成功してるんだけどね?ハハッ」
早口でそう言ってからごくごくとカクテルを飲む及川さんに、私は困惑する。
「ど…どうして私の…マンションを…」
「ん、え?そんなの前から知ってるよ?ふふっ
僕を誰だと思ってんのさ。」
何食わぬ顔でそう言って目を細める及川さんにゾクリと鳥肌が立つ。
いつも当然先に及川さんを送っているから、
その後にタクシーとかで後をつけてた…とか?