第8章 cruelty ■
そして数日後…
やっちゃんは龍也の働くクラウス店へ一日お試しで出勤することになった。
ということだから、
今夜はうちの店に彼はいない。
少し不安だけど、龍ちゃんにもしっかり彼のサポートをするよう釘を刺しておいたし、まぁ龍ちゃんがいれば多分大丈夫だろう。
「あれ?そういえば今日は、あの子がいないね?
ほら、いつも君についてるあの子」
さすが及川さんだ。
及川さんとはあのダーツの一件以来会っていなかったから少し久しぶりだ。
「あぁ…今日はね、休みみたいなの。」
「へぇ?珍しいね?
だってあの子って君と同じで毎日いる印象だから」
確かにそれは正しい。
やっちゃんは私と同じで毎日出勤していて滅多に休むことがないタフなボーイだ。
「うん。頑張り屋だからね。
たまには休んでもらわないと。」
「てことは…君の今日の送迎は誰がするの?
別のボーイ?だってあの子いつも君専属だろ?
僕とのアフターだってタクシーでいいって言うのに毎回あの子だし」
「あぁ…うん。今日は…別の人に頼むかな」
今日も及川さんとアフターすることになっている。
及川さんに限らず私の場合は申し訳ないと思いつつもアフター送迎をボーイに頼んでいるのだ。
それは私自身の身を守るため。
タクシーでそのまま帰して貰えないなんてことがあったら困るからだ。