第8章 cruelty ■
ーレオナsideー
「レオナ」
「…ん?なに、喉に詰まった?」
「詰まってたら喋れないだろ」
「あ、そっか。ははっ」
龍ちゃんはフォークに刺さった肉を差し出してきた。
「はい、今度は龍也さんがあ〜んしてあげるよ♡」
「……なにそれ、仕返し?金取る気?」
「食わなかったら取るかもね」
「なんで、だってそれ…苦手な食べ物じゃないでしょ。
さっきまで美味しそうに食べてたじゃん」
「脂身の部分がさぁ、あんま好きじゃないんだよ」
「えっ。肉は脂身が美味しいんじゃん!
私大好きだよ」
「げ〜。嘘でしょー?」
私は口内で溶けていく甘味を堪能した。
その間、龍ちゃんはずっと私の唇の動きを朗らかな笑みで見つめている。
「んー美味しい〜」
「よかったね。でも体にはあまり良くないと思うなぁ。
ほんとにそんな脂身が好き?」
「うん。この蕩ける感じがすごく好き。
タコとは大違いじゃん。てゆーか…体に悪いとか思ってんなら私に押し付けてこないでよ。」
「ふはっ。確かに。でも幸せそうな顔見れてよかった〜」
……なんで平気でそーゆー発言するかな…
この人って、意外と天然なんだよね。
最近気付いたんだけど。
「私がおばあちゃんになったら、もっと体にいいもの食べさせて?」
「はいはい〜」
龍ちゃんは何食わぬ顔で笑っている。
あれ…なんでこんな話の流れになってんだろう…
私たちの老後の話なんて…。
でもその頃の私たちって、
ホントに…一体どこでなにをしているんだろうね…