第8章 cruelty ■
「龍ちゃん」
突然名前を呼ばれてドキリとなる。
急いで顔を上げた。
「…なあに?」
レオナは真顔で
聞いてきた。
「タコ、好き?」
「へ?蛸?」
「私、ちょっと苦手なんだよね。
食べてよ」
そう言ってサラダに入っていたタコを律儀に皿に移したものを指さした。
いつのまにこんなにタコだけ避けてたんだ…
考え事しすぎてて全然気づけなかった…
てゆーか…
「嫌いなら初めからそう言ってよ。
別のサラダ頼めばよかったじゃん」
「嫌いとは言ってない。角切りのタコはダメなの。
薄切りじゃないと。」
「ははっ。意味わかんねー。
じゃあタコ焼きもダメってわけだ。」
「タコ焼きは大好きだよ。
あ、帰りに銀だこ買ってこう」
「わー、ますます意味わかんねー…」
「ほら、あ〜んしてあげるよ。
レオナさんのあ〜んだよ感謝してよね」
「え、なにそれ。金取られる?」
「食べなかったら取る。」
俺は何度も口の中へタコを押し込まれた。
「んん…あ、ちょいまってまだ噛んでる…」
「早くぅ」
「無理言うなよ。だってタコだよ?
咀嚼力が必要。」
「おじいちゃんみたいなこと言うな」
「おじいちゃんになったら、もっと柔らかいものあ〜んして?」
「しょーがないな。わかったよ。」
…あれ。
なんでそんな流れになってんだ?