第7章 situation
「いつの時代に生まれようと、同じなんだよね」
この街の夜は明るい。
自分たちがいつもいる歓楽街とは離れた場所に来たけれど、都会はどこに行っても24時間眠らない。
レオナが俺の隣で歩きながらそう言い出した。
「私の両親も龍ちゃんの両親もさ、私たちよりずっと前に生まれてるけど、その時代時代の闘いをして来たと思う。
それで、私たちも今、闘ってる…
親の時代とはまるで違う闘いだよ。
でも…敵が分からないの」
「…敵なんて、きっと自分以外の何もかもだよ」
生きることは、闘うことだ。
この世に生を受けた瞬間から、それは始まる。
皆、死に物狂いでたくさんのものと戦っていかなくちゃならない。
決して負けてはならない戦いだ。
負けると人はあらゆる部分で誤作動を引き起こすからだ。
「でもレオナは、両親に愛されていたみたいでよかったよ。」
「……愛されていたのか、ただ思い通りの所有物と思われていたのか…今となってはわからないよ」
レオナは切なげに笑って言った。
「完ぺきな親なんていないよ。
金持ちの親は与えすぎ、貧しい親は不十分。
親の愛を受ける者、受けない者。
放任主義の親、干渉しすぎる親。
…ちなみに俺の両親は愛し合ってなかったよ」
レオナが立ち止まったので俺も立ち止まった。
互いに真顔で向かい合う。
周りの音はとても騒がしく耳障りに感じたけれど、
静寂の方がもっと嫌だと思った。
「でも結婚して、姉を産み俺を産み、努力しようとした。
結婚も出産も、わりと単純じゃないことのほうが多いみたいだよ」
「……離婚したの?」
「うん。結局はね。
俺が中学上がる前くらいに母親は出ていったよ。
さっきも言ったけど、今どこで何してるかなんて分からない。
普通子供を愛していたら、そんなことにはならないだろ。
結局自分の人生が最優先って決まってるんだ。誰でも。」
昔から、愛や家族なんてテーマを考えると、俺は馬鹿馬鹿しくなったりする。
ただただめんどくさくてややこしくて、何も信用できないんだ。
だから俺はきっと、一生1人だろう。
誰かの人生に責任を持つ覚悟がない。
そう、きっと俺も…浅はかで自分勝手な人間なんだ。