第7章 situation
外出して誰かに見られでもしたらまずいので、
休んだとしても一日中家に引きこもるしかない。
なのに龍ちゃんは・・・
「変装すれば余裕っしょ♪」
とか言って。
2人で伊達メガネをかけ、
深く帽子を被り、髪型を変え、
なるべく目立たない服装をして外出することになった。
せっかくの休みなんだ。
もうなんだっていいや、
満喫してやる。
私は半ばやけくそになっていた。
けれど半分は嬉しさだった。
龍ちゃんと外出なんて初めてだ。
行くあてはないけれど、
移動手段は専らタクシーにして、
買い物をしたり、
中高生みたいにゲーセンで遊びまくった。
龍ちゃんはクレーンゲームが非常にうまくて驚嘆した。
普段から女の子に取ってあげているらしい。
だから努力してきたとかなんとか…
ああ、なるほどと思った。
さすが抜かりないな…
「こんなに上手い人初めて見たよ」
「俺を誰だと思ってんのー?」
「ふふっ。龍也様だもんね。」
「その呼び方はよせー!そう呼ばせてシャシャってるホストみたいですげーかっこ悪ぃ」
こういう絶対に偉ぶらないところもさすがだなと思う。
「はい、取れた!どうぞ!」
そう言って渡されたのは、鳥の番のマスコットキーホルダーだった。
それを私たちは、お互いの鍵に付けることにした。
「フ……かわいい。私こういうの、誰かとおそろいって初めてだよ。友達ともしたことない。」
「えっ、そうなの?女子ってこういうのものすごく好きじゃん。」
「うん…でも私は……」
手のひらにいる可愛い鳥の顔を見ながら目を細める。
「いつかそれを外す時の虚しさを想像しちゃうの。」
龍ちゃんが息を飲んだのが分かった。
「そのときにきっと、いろんなことを思い出す。
楽しかったこと幸せだったこと全部が…辛かった思い出に変わるの。それで無駄に心を消耗したくないんだよ。
いつかは捨てることになるのなら、持たない方がいい。」
微妙な空気にしてしまったことに気が付き、ハッとなって何か言い訳をしようとした瞬間、龍也の静かな声が降ってきた。
「じゃあ、捨てる?」
「え…?」
「ちなみに俺は…できれば持っていたいかな。」
顔を上げると、彼はニッコリ笑っていた。
「だってレオナと俺の思い出は、絶対に辛い記憶にはならないから。」