第2章 高校2年の夏ー動く気持ちー
なんでそんなことをする必要があるのか
私は頭がパンクしそうになる
「りほ、兄貴には絶対バレるなよ」
「...はい」
今は実弥先生の言った通りに兄には彼氏が出来たことを隠し通そうと思った
その日から兄とはすれ違いの日常を送った
兄は大学が終わったらそのままバイトまで行っていたようで帰ってくるのは夜遅くになり私は兄と会う事はなかった
少し寂しい気持ちもあったが、今はそれで良いんだと思うようにした
その後も週末は実弥先生の家にお邪魔することが多くなり浮かれていたんだ
家に帰ると母はまだ仕事で帰宅しておらず、兄が風呂から上がってリビングを彷徨いていた
私は久しぶりに見る兄に戸惑う
「おーなんか久しぶりだな」
「そ、だね」
あの事があってからこうして話すのは初めてだ
兄が普通に接してくるのが不思議だった
「今日は彼氏ん家行かねーの?」
「彼氏なんていないよ!」
「またまたぁ」
だから油断したんだ
兄が近づいて来る事さえ警戒してなかった
「こう言う事よくしてんだろぉ?」
兄は私の髪を手で掬ってキスをする
「な、なにしてっ!?」
「なーに驚いてんだよ」
「だって、お兄ちゃん!?」
顎をくいっと上げられ目があった
「お兄ちゃん?俺は一度たりともりほを妹だと思ったことはねぇぞ」
その声に体が震える
逃げなくちゃ
そう思っても体は動かなかった
「初めて会った時から俺は...」
それ以上言わせないとして兄の口を自身の手で塞ぐ
「ん」
「何を言おうと、してるの」
涙目になり兄を見るが私の腕は容易く外されてしまう
「りほを女としてしか見てなかったよ」
そう言ったかと思うと私は兄にキスをされてしまう
それも唇をなぞって隙間から舌が入ってくる
深い...キスだ
実弥先生にしかされたことがない
口を閉じるも歯列をなぞってしつこく隙間を探してくる
私が息継ぎをした隙間から舌は侵入し私の舌を絡みとる
「っはぁ」
「ん」
腕は掴まれ腰を抱き寄せられて動けない
こんなこと
望んでいない
あの優しかった兄はどこへ行ったのか
初めから
優しい兄なんて、いなかった...
頭にそう過った時、全身の力が抜けてしまった