第2章 高校2年の夏ー動く気持ちー
「おまえのその顔が今日は見れなかったからよぉ...」
そう言って不死川先生は私の頬を引っ張る
「いひゃい」
「柔らけぇな」
ふにふにと頬を摘む先生の指
少しだけ痛かったけど、悪い気はしない
「だってカナヲに授業中ニヤニヤしてるって言われて恥ずかしかったから」
「だから、あんな怖い顔してたのかよ」
「怖い!?」
「俺のこと睨んでたぞ」
「えぇ!そんなつもりなかったですよ!」
慌てる私を笑う不死川先生
「嘘だ!睨んではねぇけどよ、いつもの顔のが俺は好きだぜ?」
その言葉に私の胸が強く鳴ったのに動揺した
不死川先生はこうやって女を落とすのだろうか
思わせぶりの言葉に私は少し苛立ってしまった
「そんなこと言わないでください!」
「は?」
「失礼します」
私はそのまま数学準備室を出て行った
先生に「好きだ」と言われた
別に私のことがってことじゃないのは分かってる
でも嬉しくなかったわけじゃない
むしろかなり喜んだ自分もいたけど
そうやって思わせぶりな言葉で沢山の女の人を泣かせてきたんだろうなって勝手に解釈して怒ってしまった
あれ?
なんで、私そんなことで怒ってるの
なんで、先生の言葉一つ一つに感情が忙しくなるの
もう、わかんない
私は中庭のベンチに座り1人空を見ていた
キーンコーンカーンコーン
あ、予鈴が鳴っちゃった
クラス、戻らなきゃ
そう思うもなかなか動かない体
中庭でサボるなんて
こんなところすぐに見つかっちゃう
私は移動して生徒は立ち入り禁止の屋上に足を進めた
キィと重い扉を開く
こっそり覗いたけど、誰もいない
安心して屋上扉がある裏側に移動して寝っ転がった
空はとても青くて雲がひとつもないいい天気だ
「あーサボっちゃった」
転校してからサボるなんてしたことがなかった
次の授業はたしか...あー、宇髄先生の美術かぁ
怒られるかなぁ
そんな事を思いながら瞼を閉じる