第1章 高校2年の春ー転校生ー
玄関の前に人の気配を感じて開けてみると不死川先生が立ってて驚いた
でも、心配してくれたんだと思うと嬉しくて嬉しくて
先生の言葉に甘えてしまった
不死川先生が優しくしてくれるものだから、最初は強がってみせたけど、つい弱音を吐いてしまう
人が作ってくれたものを食べるなんて久しぶりで
こんな素朴な玉子粥なのに凄く美味しくて
誰かと話しながら食べるご飯はこんなに楽しかったんだなって元気が出た
「ご馳走様でした」
「洗い物もしとくからお前は休んでろよ」
「いいですよ!そんなことまで!」
「いいって!気にするな」
また頭を優しく撫でてくれる先生の手は温かくて優しい
この大きな手が私を甘やかしてくれる
「甘えても、いいんですか?」
「少しくらい甘えても誰も文句言わねぇよ」
立ち上がって食器を片付ける不死川先生はキッチンに入っていく
ダイニングテーブルから先生を眺めてると「なんだよ」と睨まれてしまった
不思議なものだな
あの日女の人に冷たい態度をとっていた人が本当はこんなに優しい人だったんだなと
「先生って浮気したことあるの?」
「は?」
「この前の」
「だからよぉ!あれはあの女が勝手に言い寄って来て、俺が別の奴と連絡してるの見て浮気だのなんだの言ってきやがったんだ。そもそも付き合ってねぇよ」
「じゃぁ彼女はいるの?」
「随分いねぇなぁ」
「先生カッコいいのにね?」
「関係ねぇよ」
そうか、彼女...いないのか
でも、やりとりする相手は沢山いるって話ですね、はいわかりました
私が勝手に不機嫌になってると不死川先生は濡れた手を拭いて近づいてくる
「宇髄がな、彼女作れって勝手に女どもに連絡先教えてまわってんだよ」
私の不満を読み取ったのか不死川先生は話出した
「それで、やりとりはしてるんですね」
「なんだぁ?妬いてるのか?」
私は何を怒ってるのか
妬いてる?
不死川先生に?
「そんなわけ、ないですよ」
「ふーん」
ニヤニヤする先生は男の顔をしてる
「じゃおまえのも教えろよ」
「へ?」
「寂しい時は連絡してこい」
「生徒に教えていいんですか?」
「んなもん、バラさなきゃわかんねぇだろ」
悪い顔してる
先生ともあろう者が生徒の連絡先を聞いてくるなんて
そう思ったのに私は自然とスマホを手に取って連絡先を交換しようとしていた
