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赤い糸

第1章 高校2年の春ー転校生ー


月曜日

「おはようございます」

スカート丈を戻して校門をくぐる
今日は冨岡先生に何も言われずに済んだ

廊下を歩いていると不死川先生が向かい側からやってくる

「おはようございます」
「おはよ」

それだけ
私たちは生徒と先生
家が近いからって何も起こりゃしない

「おい高田」

すれ違いざまに呼び止められる

「はい?」
「後で数学準備室に来てくれ」
「はぁ」

私は教室に入って鞄だけ置いて数学準備室に向かう

何か悪いことでもしただろうか
テストの点数は悪くない筈だ
数学は得意なほうで赤点なんて取ったことないし
じゃぁこの間の合コンのことか?
いや、あれは帰り道に十分と言っていいほど話したはず
そう考えながら歩いていると数学準備室に着いた

「失礼します」
「おー悪いな」
「なんですか?」
「このプリント配っといてくれるか」
「はぁ、なんで私なんですか?」
「ん?たまたま会ったからだよ」

それだけかよ、と肩の力が抜ける
散々悩まされた挙句にたまたま会ったからだと
ただのパシリじゃんか

「パシリですか」
「どーせ教室いたって暇だろ」
「最近は友達もできました」
「お!なら良かったじゃねぇか」

不死川先生は私の事なのに嬉しそうに笑ってくれる
そんな先生に私は驚いた

「私なんかのこと気にしてくれてたんですか」
「まぁあの日屋上で寂しそうにしてたら気になりもするわな」
「お陰様で今は楽しくやれてますよ」
「そうか」

気にかけてくれる不死川先生はやっぱり優しいなと思った

あの日コンビニで見た先生とは別人なのではないかという程に

「先生って二重人格ですか?」
「はぁ!?」
「私は優しい先生を知ってますけど、あの日女の人に冷たかった先生も知ってます」
「あー」
「別人じゃないかと思う程です」
「そこまでねぇだろ」
「やっぱり男の人は信用できないな」
「は?」
「私、男の人信用してないんで」


そう言って準備室を出た

優しくされると勘違いする
そして近付くと蹴落とされる

父が優しい時はいつも怪しかった
その裏にはいつも女の影があって
優しさに騙されちゃだめだ
絶対裏があるって思っとかなきゃ
落とされた時のダメージがでかい
母はいつもそうだったから
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