第1章 高校2年の春ー転校生ー
「お兄ちゃーん?お風呂空いたよー」
私が首から掛けたタオルで濡れた頭を拭いて出て行くと兄はテレビを見ていた
母はどうやらもう自室に戻って寝ているらしい
本当、子供が遅くに帰ってきても無関心なんだなぁと思う
そのおかげで自由にさせてもらってるけどさ
「おにーちゃーん?」
「お?あぁ風呂ね」
「何見てたの?」
私は兄の後ろから抱きつく
兄はそんな私を嫌がることなく受け入れてくれるしそんな兄が好きだ
「この芸人あんま面白くねぇなあって見てた」
「それ見なくてよくない?」
「あはは、それもそうだよな」
兄は父に似てよく女を取っ替え引っ替えしている
家にくる人はいつも違う人
だから母のいる時には絶対に連れてこないのを知ってる
だから男は信用ならない
「りほおまえ、また胸デカくなった?」
「え?そうかなぁ?」
兄の背中にぴたりとくっつけた胸に兄は顔色一つ変えずにそう言うのだ
「うん、絶対デカくなってるよる。誰かに揉まれた?」
「揉んでくれる人とかいないよ」
「りほは可愛いんだから彼氏くらいすぐできるだろー?」
「お兄ちゃんとかお父さん見てたら男なんて信用できないね」
「あはは、ごめんなぁ〜」
全然ごめんとか思ってない声色で謝ってこられても
私は兄から離れて冷蔵庫から牛乳パックを手に取りラッパ飲みする
「私もう寝るね」
「おーおやすみぃ」
「おやすみ」
私は部屋に戻ってベッドに入る
彼氏は高1の時に一度できた
というより告白されてそのまま付き合って、体の関係になった
けど、痛いだけでなにも気持ちよくない
相手が勝手に気持ちよくなってるだけで
なにがいいのかわからなくて別れた
私は誰かを好きになった事ない
好きになって裏切られるのが怖い
なんで母が父と結婚したのかわからない
あんな浮気者のどこがよかったのか、顔か?
確かに顔はよかったと娘ながら思うけど
愛なんてわからない
いつか裏切られるんだ
私には一生わからないものだと思ってた