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第6章 「レディース総長とロン毛隊長」
とは別棟の団地仲間だった。
お互い目立つような格好で近くに住んでいたのに顔は知らず、偶然この日に出会ってしまった。
同じ造りの団地なのに妙にキンチョーする。
「かーちゃん寝てるから静かにな」
「あぁ」
深夜2時過ぎ。
は が自分の母親のことを「かーちゃん」と呼んだことに内心驚いていた。
自分の母親とは違うニオイがする。
三回言って守れなかったら手を上げられ、反抗したら手を上げられ、大切にしていたモノを勝手に捨てられ、洗濯モノも洗ってもらえず、飯も抜きにされる。
「ごめんなさい」のたった一言が言えなかった。
早く言えば取り返しがついたかも知れないがは手段を知らなかった。
親子の仲直りを知らずに育ち、他人の親子をみて学んで「ごめんなさい」といった頃にはもう遅くて…、愚痴愚痴愚痴愚痴と口を開くたびに「私だって忙しいんだから。アンタのために働いてるんじゃない。私は家政婦じゃないの。女の子なんだから自分でそれくらいやりなさい」と横になってテレビを見ながら言ってきた。
この瞬間、自分たちは他の親子とは違う。
母には何も期待できない。
修復できない。
自分の好きなようにやってやると反抗的な態度を取った。
ルールを守らない素行の悪いことをして、不良になって、悪い奴らとつるんで、イキがって、自分を守るために仲間を大切にして、同調して、元総長に「夜中に制服姿でうろつくな」と注意されたのがムカついて喧嘩になって、ボコされて、はじめて拳の握り方を覚えて、たむろしていた に頭を下げて仲間に入れてもらった。
は自分が自分らしくいられる居場所だった。
「食え。おにぎり」
米粒だらけの手で渡された不格好な握り飯。
口にすると訳も分からず涙が溢れだした。