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第6章 「レディース総長とロン毛隊長」
「泣くほど美味いか?」
見た目だけじゃなく味も最悪。
冷ご飯だし、チンしてないし、塩つけすぎだし、デカすぎだし、固く握り過ぎだしもう色々と最悪。
なのに涙が止まらなかった。
「~…っ…ひっく」
「ゆっくり食べろ。麦茶も置いとくな」
最悪のメシなのに美味しかった。
泣くほど美味いかと聞かれて勝手に首が動き、麦茶で流し込みながら美味いメシを頬張る。
口の中に入れなければ泣き言まで出そうな気がした。
消化すれば不安定な気持ちもいずれ落ち着く。
今までそうやって来たこと。
「風呂……ぁ…がと」
「おう。髪乾かしてやるよ」
洗面台にドライヤーがあったが勝手に使うのは気が引けた。
狭い団地で自分ちよりも物が多い気がするのに何倍も手が行き届いている部屋のなか。
ドライヤーを持ってきた はコンセントを挿し込み、腰を下ろす。
「こーこ。座って」
「………」
「素直だな」
「ッ」
睨もうと思ったが絶対に見せられない。
威嚇どころが顔に火が付いたように耳まで熱い。
ドライヤーの温風と夏の暑さのせいにして、必死に気を紛らわす。
「すぐ乾きそうだな。短いのが好きなのか?」
「…後輩が…、そのケジメ」
「誰に?」
「元カレ」
「自分の女に手ェ出したのか?」
「別れろって何度も言ったんだけど。普段はニコニコして優しいから踏ん切りつかなくて、酒入ると陽気どころか笑いながら暴力振るうヤツ」
「それでお揃いにしたのか」
「仲間にはやらせなかった。私みたいに顔を傷モノにされなかっただけでもホント良かった」
元カレは髪の長い女が好きだと豪語していて、その子がとても大切にしていたのを皆は知っていた。
だから許せなかった。
大切な髪をちょん切られ「もう限界」と泣きながらに状況を説明してくれた。
その日に殴り込みに行って、二度と姿見せんな!!と啖呵を切って、その夜にその子よりも短く切って、次の日にベリーベリーショートになった姿を皆に見せた。
「髪も傷んでたから丁度いいと思って。すぐ赤ピンク染めたけど」
あれから半年以上も経ったからボブくらいにはなっていた。