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第6章 「レディース総長とロン毛隊長」



***

 話は現実から過去へと戻り、傷だらけのは血なまぐさい唾液を地面に吐き捨てる。

「肩貸すぜ」

「いい…」

「遠慮すんなって」

「気安く触んな」

 思わず安心して尻ペタをつけてしまった。
 立ち続けるのがしんどかったからだ。
 小鹿のように震える膝にイラ付きつつ、これ以上弱みを見せたくないは気力でどうにか立ち上がる。

 少し離れた所にあった食べ損なったチョコチップクッキーの袋に手を伸ばす。

「あ…」

「これの?」

 足を引きずるよりもピンピンしている に拾われ、袋の中身を覗かれる。

「粉々だな。あーん」

「な!?てめッ」

 食べ損なったチョコチップクッキーは道路にも散乱していた。
 流石にそれは汚くて拾い食いしたくない。
 わずかにでも袋に残っていればと思ったのだが、108円の残骸を は袋を逆さまにして口の中に放り込んでしまった。

「久々に食ったけど美味ぇな、コレ」

「てめぇ…っ」

きゅる、ぎゅるるる…

 残骸だけど美味そうに食いやがって。
 腹立つ気持ちとは裏腹に緊張が失せた腹から情けない音が響き、ひんしゅくする。

「俺んちそこの団地なんだ。手当してやるよ」

  は口には出さなかったが口元が笑っている。
 人の情けない所をみて笑われた惨めさ。

 けれど、見下しもバカにもしない温かさを感じて、キュゥンンッ…と心臓が慣れない心拍音を鳴らす。
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