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第13章 「溺愛オナペット」



「ご、ごめんなさいっ!!遅れちゃって…っ」

 慌てて来たからゼエゼエ息が切れる。
 ただでさえ運動音痴で体力もないから不様な格好をみて は、車から降りて後ろのドアを開けた。

「髪の毛ボサボサ。もう10分くらい見積もった方が良かったかな」

「ううん。もう一刻も早く逃げたくて、私…っ」

「大丈夫。落ち着いて。絶対成功するから」

「…うんっ」

 荷物を乗せて助手席のドアを開けてもらう。
 息が整ってもまだ心臓の音がまだバクバクうるさくて、張り付いた前髪を何度も梳く。

「アイツから連絡は…?」

「まだ家に帰ってる途中かもしれない…」

「にしても不思議だよなぁ」

「?」

 前方から車を横切り、街灯を下を走っていく。
 通り過ぎる車をみるたび と同じ車ではないかとハラハラする。

「こんなに束縛してるのに同棲強要したり、隣りに越してこいとか命令してこない辺りさ。不思議だなぁって思って」

「あぁ……それは確かに」

「こんなこと言いたくないんだけど自分には甘いのかもな。別に女作って、の行動制限してるのかと思ったり」

「………」

 その発想はなかった。
  には別に女がいる。
 よく考えたら家デートが多かったかもしれない。
 セックス目的に呼び出されて、満足したらさっさと帰っていく 。

「……ごめん。余計なこと言った」

「ううん…。そう思ったら、なんか…急に馬鹿馬鹿しくなってきちゃった」

  に固着する理由が無くなっていく。
 ひどくても自分だけ愛されているなら多少は我慢できた。
 都合の良い女。
  は平気で嘘を吐くし、あれもこれも嘘だと思ったらポタポタと涙が落ちてきた。

「……ひ、っく…」

  のために泣きたくないのに涙が出てくる。
 忘れたい、全部。
  の思い出も全部なかったものにしたい。

「俺がいるからもう大丈夫だよ」

「……ん」

「大丈夫だから」

「…ぅんっ」

  が居てくれて本当によかった。
 溜息に気付いてくれてよかった。
 でなきゃずっと の良いように使われていたんだから。
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