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第12章 「オレは男だ!!~このまま拉致ってレイプしてやろっか?~」



***

 数週間後、との面会がようやく許された。
 30分だけなら可能と言われてやって来た。

「こちらです」

 病棟には入れず、面談室のようなところに通された。
 はまだ精神科病棟から出れないらしい。

「絶対声、荒立てんじゃねーぞ」

「分かってるって。ここ病院だもん」

「……はぁ」

  は姿をくらました。
 だが、ヤツは必ず姿を現す。
 待っている時間は長かった。
 動く針をみたが時間よりもに会える喜び。
 ガチャッと扉が開き、女性医師と看護師に連れられて車椅子に移乗したの姿。

 顔貌はやつれ、覇気がない。
 けれども血色はそれほど悪くなくて安心する。
 は瞬きをしているが一向に視線を上げない。
 少し、怯えているようにも見えた。

「大丈夫?」

「………」

 医師に心配され、は小さく頷く。
 以前のの面影を失い、 もかける言葉を失っている様子だった。

  は手の届くそばまで近づき、片膝をついた。

「俺が分かるか?」

「………」

 は目を合わせようとしない。
 多動も目立つ。
 首を振ったようにも見えたが、突然、ポロポロと大粒の涙を流し、声を殺して号泣しはじめる。

 間近での泣き顔を見たのはいつ以来だったか。

「お部屋戻る?」

「うぅうぅ~」

 看護師に聞かれては首を振る。

「お友達のこと、わかる?」

「うぅうぅ~」

 は泣きじゃくりながら首を縦に振った。
 の頭の中には自分達がいる。
 それだけ少し救われた気分がする。

「お友達が来てくれて嬉しいね」

「うぅうぅ~」

「毎日、病院に顔出しに来てくれたんだよ」

「うぅうぅ~」

「やさしいお友達だね」

「うぅうぅ~」

 は看護師の言葉に頷くのみだった。
 との距離感に戸惑ったが、がされたことを考えれば今はグッと堪えるべきだと感情を抑える。

「。また来ても良いか?」

「………、…」

 返事はなかったが僅かに目が合った気がした。
 目を伏せて頷き、は看護師に連れられ部屋を出て行った。
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