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第6章 「レディース総長とロン毛隊長」



「タイマン張れや!!拳握ろよ!!根性みせろよ!!」

 全然脇の入っていない握り拳。
 そんなへなちょこパンチじゃ打たれ強いは早々倒れない。

「やる気あんのか!!」

「闘えやコラ!!」

「ナメてんじゃねぇぞ!!」

 仲間の野次が次々と飛んでくる。

「………」

  は腕を組んだまま黙って見ており、 を失いたくない想いや への罪悪感、仲間を裏切った苛まれる気持ち、路頭に迷って死んでゆく自分の姿などが渦巻き葛藤する。

ドサッ

 何発目かのパンチでは尻ぺたを付く。
 殴り慣れていない は肩で息をするほど乱れており、は口に溜まった血液をペッと吐き出した。

「ッ……アンタはそれで良いのかよ!!」

 静寂の中、 の叫びがコダマする。

「アンタはそれで本当に良いのかよ!!私はイヤだっ!!気に食わねえ!!ナメられっぱなしで勝ってもちっとも嬉しくねーんだよ!! さんに惚れて付き合ってんじゃねーのかよ!!ふざけんじゃねぇよ!!」

 ふざけんじゃねぇ…そりゃそうだ。

「一人で勝手に諦めんじゃねぇよ!!相手の気持ちも自分の気持ちまで無視してどうすんだよ!!闘えよ!!ナメてんじゃねぇよ!!」

「………」

  は咆哮しながら涙した。

  が好き。
  を好きでいる自分が好きだった。
 友達や仲間と好きな人を被らないようにしていた時期を思い出し、今もまだ過去を引き摺っていた。
 内なる自分を見せたくないから恋愛も奥手になる。

  が惚れてるって言ってくれたことで安心した。
 自分に自信が持てた。
 けれど、タイマン張れといわれて勝手に見捨てられたと自己完結して、誰とも向き合わず、闘わずして諦めていた。

「ッ…」

 仲間には申し訳ないことをした。
 けど。
 やっぱり…私には…

「 が好きだ!!誰にも渡したくねえっ…!!」

 私には  という男が必要だ。
 誰にも渡したくない。
  と一緒に幸せになりたいから。
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