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第6章 「レディース総長とロン毛隊長」



「───…っ、テメェ!!」

 どんなに髪を伸ばそうと、爪を伸ばそうと、メイクをしてスカートを短くしようと最後は顎の傷痕を指摘された。
 ホクロだったらエロいのにと笑われるが、そこにあるのは実の母親につけられた一筋の傷痕。

 だから"常時マスク"というアイテムを活用した。
 男が欲しい時期はもちろんあった。
 レディースに入隊する前のとき、彼氏がいる友達や仲間が羨ましく思ったからだ。

 可愛がられたい。
 優しくされたい。
 女の子扱いされたい。

 けれど言い寄ってくる奴らは下半身だけの口の悪い男ばかりで、周りは卒業しているのには焦りと諦めの気持ちを抱えていた。

「の魅力はその傷で失うもんじゃねぇ」

 ふざけた台詞を真面目な顔をして言う男。
 何も知らないのに…と反抗的な想いもあったが救われた気持ちもあった。
 顎の傷があっても女としての価値がある。

「むしろキスしたくなっちまったしな!」

 初めて外見を褒められた。
 下半身男はヤリたい目的だけで褒めてきたけど、 はそれだけじゃない気がする。

 ……口より先に手が出てきたけど。

「目の下、クマ出来てんぞ。あんま寝てないだろ」

「たまに寝てる」

「俺ん家泊ってっていーから。そこ俺の部屋。ベッド使って寝ろ」

「っえ」

「俺、に大分惚れ込んでる。これ以上、同じとこで息吸ったら…たぶん絶対手ェ出す。俺はここで寝るからよ」

「ぁ……」

 部屋を明け渡され、雑魚寝するようにその場で横になってしまう 。
 これが男のやさしさ…?

「電気…消す」

「さんきゅ」

 布団を掛けてやりたい気もしたが、思っただけで行動ができない。
 急に女々しくなったと思われるのも心外。
 蛍光灯の紐を引っ張って灯りを落としていく。

「おやすみ」

「ぉ……」

「zZZZ」

 寝るの早ッ。
 スイッチがあるようにグーグーと寝息を立てている。

「………」

 本当に寝ただろうか。
 近寄ったりしたら目が覚めないだろうか。

「……ありがと。 。おやすみなさい」

 寝ていることを信じて礼を言う。
 感謝の気持ちを込めて、近くにあったパーカーを掛けて のベッドを借りて横になったのだった。
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