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テイルズオブヴェスペリア フレン夢

第6章 港の町 カプラ・トリム


先に部屋に入るのを見送って一同は詰めていた息を吐き出した。
汗が流れる錯覚すらする。
こちらの地が固まっていないのは非常に不利だが、執政官を一人にしておくわけにもいかない。
フレンは気合を込めた息を吐いて部屋に入った。
証人であるユーリたちを待つということでラゴウとヨーデルは世間話をするに留める。
少ししてノックと共にユーリたちが入ってきた。
気づいたリタはすぐに殺気まじりにラゴウを睨みつける。
「おや、どこかでお会いしましたかね?」
「船での事件がショックで、都合のいい記憶喪失か?いい治癒術師、紹介するぜ」
「はて?記憶喪失も何も、あなたと会うのは、これが初めてですよ?」
余裕のラゴウにユーリも皮肉で返すがやはりしらばっくれる算段らしい。
フレンが彼らが証人だと言ってもやはり騙りが陥れたと主張する。
「さあ、フレン殿、貴公はこのならず者と評議会の私とどちらを信じるのです?」
「そのならず者に私も含まれます?」
勝ち誇った言葉にユーリの影に隠れていたエステリーゼが一歩出る。
「これは……エステリーゼ様」
表情から彼女の存在には気がついていたものの発言するとは思っていなかったようだ。
確かの今のエステリーゼは城にいたころと少し変わっている。
「私も確かに見ました。ラゴウ執政官が乗った船に、ヨーデルがいたことも」
いつになく真剣で、凛々しくさえあるエステリーゼの顔をそれぞれが見つめる。
数秒とも数分ともつかない沈黙の後に言葉を発したのはラゴウの方だった。
「では議会で私の疑惑を晴らしましょう。よろしいですね?」
議会、と言われれば受け入れるほかない。例えそれがラゴウの独壇場になるとわかっていても。
「フレン……」
ユーリが物言いたげに呟くが一小隊長であるフレンにはどうしようもないことだ。
悲痛に顔を歪めるのと対照的にラゴウはわずかに笑みを浮かべて会釈した。
「決まりましたな。では、失礼しますよ」
痛いほどの視線を受けながら、不意に振り返りエステリーゼを見る。
「それからエステリーゼ様、貴女は評議会側の人間です。それをお忘れなきよう」
エステリーゼはそれに対して一言も発せず、扉が閉まる音だけが部屋に響いた。
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