第1章 全ての始まり
「おかえりなさい、2人とも。お疲れ様でした」
「シエラ!回復呪文!役に立ったのよ!」
「良かったです!私も教えた甲斐がありました」
「僕も、剣の扱い方、役に立ちました」
「良かったです。お二人が怪我なく帰って来れた事が何よりですね」
2人とも、私の教えた事が役に立ったと喜んでくれている様だ。私としても嬉しい限りである。
「それに、この子が美味しそうな鹿肉を取ってきてくれたのさ」
「本当⁉︎」
「ふふふ、弓も使えるんですよ」
「凄いわ!」
エマさんがはしゃぐ姿を見て、私も初めて戦闘を生業とする人見た時はこんな感じだったなと思い出した。
「あ、ねえねえ聞いておばさま!イレブンったら凄いのよ!」
どんな武勇伝が出てくるのかと思えば想像を絶する話の内容だった。
「…そうかい」
エマさんが全てを語り終えた後、ペルラおばさまは歯切れの悪そうな感じでボソッと呟いた。
「痣…?雷…」
痣、雷。でも何となく話を推測するに、その痣が雷を呼び出したと考えて間違い無いだろう。でもこの世で雷の魔法を扱える人なんてたった1人しかいない。
「やっぱり、アンタは勇者なんだよ!」
「ええ⁉︎」
「私も、そう思います」
「シエラまで!」
「この世で雷の魔法を操る事ができる魔法使いは居ないのです。それ程に雷魔法は神聖なものなのです。だからこの世で雷呪文を扱えるのはただ1人」
「勇者…なのね?」
「はい」
魔物に襲われて雷が出るならともかく、それがピッタリ魔物に命中するなんてまず無い。奇跡的な確率を引き当てる確率は無いと考えて良い。
「デルカダールの王様を尋ねるんだ」
デルカダールか…近頃不穏な噂もあるが、やはり知識はあるようなので、何か知ってはいるのだろう。
「では、デルカダールまでなら、私も同行しますよ。その方が安心でしょう?」
「いいの…?」
「勿論。寝床も料理も用意して頂いた上に何も返せないのは嫌ですし、戦いなら任せて貰っても構いません」
「それなら安心だね」
「…」
エマさんは少し寂しそうだ。今まで一緒に育ってきた幼馴染が急に旅に出るのに寂しくない人なんていないだろう。
「明日は早そうですし、ご飯を食べて早く寝た方がいいと思います。馬を駆っても半日はかかりますから。なるべく早く着いて王様に謁見したいでしょうし」
「アンタ、馬はあるのかい?」
「いえ…」