第1章 全ての始まり
今迄船を乗り継いだり、国から国へ行くのも基本徒歩だったので、馬を使用する事はなかった。でも一通り扱えはする。
「なら一頭貰っておいきよ。馬ばっかり一杯あって困ってるんだ」
「分かりました。ありがたく頂きます」
馬を確保できたところで話は一度終わり、夕食を食べる事にした。エマさんは夕食を食べ終えてすぐに家に籠ってしまったようだ。複雑な気持ちではあるだろう。
「では、おやすみなさい」
「おやすみ、良い夢を」
ベッドに入り込んで布団を被る。暖かくて、なんだか急に昔の事を思い出した。良く兄と姉と私の3人で川の字になって寝たものだ。そんな暖かい光景がいつかまたあったら良いなと考えつつ、眠りについた。
ーー翌日
朝早く起きて、荷造りをしておいた荷物を馬に乗せた。背中に弓を纏い、馬に跨る。しっかりしてるっぽいので多分良い馬なんだろう。
「イレブン!」
エマさんが全速力で駆け寄ってきた。どうやら頑張ってお守りを作っていた様だ。何とも良い幼馴染である。大事にしてやれよ…!!
「さぁ、行きましょう」
「イレブン!シエラも!気を付けてね!」
「はい!皆さんもお元気で!」
「行ってくる!」
村人に見送られながら、手綱を引いた。
「まずは北を目指しましょう。大雑把に言うとその方角にデルカダール城があります」
「分かった」
「道中の敵はなるべく弓で蹴散らしますが…如何せん回転率が悪い武器ですので、当たってしまった場合は大人しく戦いましょう」
「うん」
そんな訳で時々道中の敵を倒しながら北へ北へと向かっていく。スライムなどの弱っちい魔物ばっかりで退屈だが、イレブンさんには丁度良いレベルなので、まずはこの辺りでレベル上げをするのが妥当だろう。
「大分レベル上がりましたね」
「うん、こんなに効率よく上がるんだね」
「1人よりは大分回転率良いと思いますよ。単純に手数が倍になるので」
「でも、本当にシエラは強いね」
「そんな事ないです。きっとイレブンさんはすぐに私のレベル追い越しちゃいますよ」
「そうかなぁ」
ポリポリと頬を掻きながら笑った。控え目な方なんだなぁ。それに恐らくだけど、とても優しい。優しすぎるが故に流されないと良いんだけど…ってこれは要らぬ心配か。
「あ、見えてきました!」
いざデルカダール城へ。しかし、この選択が私を地獄へ落としていったのである。