第1章 全ての始まり
「あっ…!」
「良い感じです!エマさん!」
「これが…魔法?」
「はい、じゃあ丁度さっき擦り傷を負ったイレブンさんに使ってみましょ」
「分かったわ…えいっ…!」
緑色の光がイレブンさんを包み込むと、指先の傷は綺麗さっぱり消えていた。
「治ってる…!」
「わ、私本当に魔法が…!」
「大成功です!」
ホイミ使えるだけでもだいぶ違うし、明日の成人の儀式とやらもこれがあるだけでだいぶ違うだろう。
「2人ともお疲れ様でした。前日だというのに疲れさせる様なことさせて」
「ううん!為になること教えてもらってとっても嬉しかったわ、ありがとう!」
「僕も、ありがとうございます」
「いえいえ、良くして頂いたので何かできる事をしたいなと思っただけですから…」
「私も、イレブンも感謝してるわ。本当にありがとう」
深く頭を下げられてはこちらもタジタジになってしまう。
「ふふふ、お二人の為になって良かったです。もう夕方ですし、お家へ帰った方が良いかもしれませんよ」
「そうね。それじゃあここで別れましょ」
「そ、そういえば…ここの村に宿屋ってありますか…?」
「此処は小さな村だし、旅人が来る事自体が滅多にないから、ないかな…」
「そ、そう…ですか」
「大丈夫だよ。多分母さんももう一晩くらい止めてくれると思うし」
「申し訳ないけどそうさせて貰った方がいいかもしれません。夕方から動き始めるのは危険ですし」
いくら自信のある冒険家でも夕方からフィールドに出る事はない。夜は魔物が凶暴化してしまうので、圧倒的にこちらが不利になるのだ。
「じゃあ2人とも!また明日ね!」
「ふふ、はい、また明日」
「バイバイ、エマ」
「お二人はとっても仲良しなんですね」
「幼馴染なので」
少しはにかみながらイレブンさんが言う。きっと小さい頃から一緒に育ってきたのだろう。
「大切な人は大切にしないと、ですよね」
「?」
「ただの独り言ですよ」
少し歩くとイレブンさんのお家に着いたようである。
「あら、おかえり」
「あ、あの…おばさま。図々しくて申し訳ないのですが、もう一晩泊めて貰ってもいいですか…?私にできる事ならなんでもしますので!」
「構わないよ!さ、夕飯ができてるよ!沢山食べな!」
「ありがとうございます…」
もはや神様である。ご馳走まで用意してくれて…ありがたい限り。明日一杯働こう。