第1章 全ての始まり
食器洗いを一通り終えて、私は散歩に出かける事にした。やっぱりここは空気が美味しい。
「ご一緒しても良いですか?」
「あ、はい!私1人だと迷いそうなので…」
「そういえば、お名前は何と言うんですか?」
「私の名前はシエラです。あなたは?」
「僕はイレブンです。ここはイシの村で…」
「イシの村、というのですね。渓谷の奥に村があるとしか聞いていなかったので、名前は知りませんでした」
村の細道を歩きながら言葉を交わしていく。こんなに話すのは4人で旅した時以来だと、少し懐かしくなってしまった。
「でもどうして僕のおじいちゃんを?」
「どうしても知りたいことがあったんです。はっきりと言う事はできませんが…。半ば手当たり次第に知識人を訪ねているんです。どうしても、知りたい、いいえ、知らなくてはならない事があるので…」
「そうなんですね…」
「イレブーン!」
綺麗な女性の声がすると思ったら、金髪の可愛らしい女の子が手を振っていた。
「あら、その人は…」
「シエラと言います。飢餓状態で倒れていた所を助けて頂いたんです」
「そうだったのね!私はエマよ。よろしくね」
「はい、よろしくお願いします。今はちょっと散歩がてら村を案内して貰っていました」
「だったら一緒に行きましょ!明日は丁度、神の岩に登る成人の儀式があるの!そこを見に行きましょう!」
神の岩、か…。村からちょこっと見えていたけど、なんとも神々しい紋様が描かれていた事は知っている。
「神の岩はこっちよ」
案内されるがままについていくと、大分大きなサイズだと言う事が分かる。けれどこれを…登る…?
「これ、どうやって登るんですか…?」
「実はね、ここをもう少し行くと洞窟があるのよ。そこを登って頂上へ行くのよ」
「あ、ロッククライミングで行く訳じゃないんですね」
「そんな危険だったら儀式にはならない、かな」
「そ、そうですよね!何だか登るって聞くとそういうイメージで捉えてしまって…!」
流石に未成年にそんなことさせられないか…というかよく考えたら普通に分かる事だったかも。
「そういえば、洞窟の中は安全なのですか?」
「う〜ん…どうかしら、私達も入った事はないからわからないの。でも、皆が通る道だと考えればそれなりに安全だとは思うのだけど…」
「良ければ、何かあった時のために剣の使い方を教えましょうか?」