第1章 全ての始まり
目が覚めると、石造りの天井に目が行った。どうやらどこか別の場所に来たらしい。ゆっくりと起き上がると美味しそうなシチューの匂いがした。
「ここは…」
「起きたのかい!」
「あなたは…」
「うちの子が倒れてるアンタを見つけて拾って来たのよ」
「無事で良かったです」
慌てて声が聞こえた方に目を向けると、男子では珍しいボブカットの少年が座っていた。
「あなたが…私を助けてくださったんですね」
「山菜を取りに村を出たら人が倒れていたので…」
「申し訳ありません…空腹に耐えかねて、寝てしまった様です」
「それなら丁度いい!シチューが出来たところだから食べてお行き!」
「良いんですか!」
「お腹空かせてる人の前でバクバク食べる方が気が引けるよ!」
なんって優しいマダムなんでしょう…。久しぶりの優しさに胸がジーンとなってしまった。
「いただきます!」
「たんとお食べ!」
スプーンでふーと冷ましながら一口。めっちゃ美味しい。すごく美味しい。こんな美味しいシチュー初めて食べた…。
「す、凄く美味しいです!私、このシチュー大好きになりました!」
「それは良かったよ。しかし、なんであんなとこに倒れてたんだい?」
「とある人を訪ねようと思って…」
「とある人、ですか?」
「はい。『テオ』さん、という方なんですが…」
「その人って…!」
急におばさまと少年が固まった。もしかして口に出してはいけない感じの人なのだろうか。
「もしかしたら…うちのおじいちゃんかもねぇ」
「お爺さま⁉︎」
「だけど…数年前に他界してしまって」
「あっ…」
「気にしないでおくれよ。でも残念だったねぇ、折角ここまで来たってのに。ご期待に添えなかったお詫びと言っては何だけど、ゆっくりしていきなよ」
「ありがとうございます、おばさま」
そう言って私はスープを一気に喉奥に流し込んだ。
「とっても美味しかったです!こんな見ず知らずの旅人に優しくして頂いて、ありがとうございます」
「良いんだよ。今日は天気も良いし、散歩でもしてきたらどうだい?」
「は、はい!」
おばさまは私が食べた後のスープの皿を回収しながらそう言った。
「で、でも折角ご馳走して貰ったのですし、お皿洗い位なら任せてください!」
「そうかい?じゃあお願いしようかねぇ」
おばさまから食器類を受け取って皿洗いを始める事にした。