第3章 ダーハルーネへ
翌日。デルカダール兵が来た所で、私はひたすら音を立てない様に宿屋の一室に立て篭もった。どうやら智将ホメロスが来ている様だ。あの男は恐らくイシの村を焼き払った男。王令とは言え、皆殺しを指図したなんて許せない。後からグレイグ将軍が捕虜にしろと命じたようだけど…デルカダールには今後関わらないようにした方が賢明だ。
「イレブンさん達は…無事でしょうか…」
日記を1人で書きながらポツリと呟いた。デルカダール兵がダーハルーネに来たという事は、イレブンさん達が此処に来る可能性が高いという事だ。そしてそれはつまりイレブンさんの生存を意味する。何とか生き延びてくれたらしい。恐らく兄はイレブンさんと共に行動しているだろうから安心だろう。兄もああ見えてできる男だ。
「あんた!大変だよ!悪魔の子が本当に来ちまったんだ!」
「おばさま!それは本当なのですか⁉︎」
「ああ!さっきデルカダール兵と戦ってたよ!」
なんだか嫌な予感がして、兵士に気づかれるのも厭わないで、ステージに向かって走り出した。見覚えのある茶髪と青色の髪。
「お兄ちゃん…イレブンさん…」
このまま見てるだけなんて…できない。やっぱり、助けなきゃ。
「待っててね…今行くよ」
宿屋の上からロープを伝ってステージに近づく。なるだけ高い位置に着いて、弓を3本振り絞った。兄達へにじり寄る兵士の足元に矢を放ち、続けてまた3本を振り絞る。
「なんだ!」
「いきなり矢が⁉︎」
「シエラ⁉︎」
「エリーがいるのか!」
兄達も私の存在に気付いた様子。智将ホメロスも私の方へ視線を向けた。
「あの女…」
気付かれたけど…仕方ない。イレブンさんがデルカダールに捕まるよりは全然良い。それに…お兄ちゃんも。どうやら仲間が何人か増えていたようで、私と小さな魔道士さんが惹きつけていた間に2人は脱走したようだ。もう少しで脱走完了と思われた所で、お兄ちゃんがデルカダール兵に捕まった。
「お兄ちゃん!」
「お嬢ちゃん、こっちへいらっしゃい」
「あなたは?」
「アタシはシルビア。しがない旅芸人よん」
「イレブンさんの…仲間ですか…?」
「あら、知り合いだったのね。尚更話が早いわ。さ、行きましょ」
旅芸人に手を引かれて、知らない人が集まる所へ連れてこられた。
「この子は?」
「シエラだよ」
「シエラさんと言うのですね。宜しくお願いします」