第3章 ダーハルーネへ
2人を置いて洞窟から無事に脱出することができた。あの2人は多分大丈夫だろう。勇者様の奇跡を信じるしかない。それで、その後どうしたかっていうと、まずはデルカダールの西の海岸で船に乗ったのだ。丁度行商用の船がダーハルーネに行くとのことだったので、気づかれない様にそっと船に乗ってダーハルーネへ行くことができたのだ。
「おばさま。庭の掃除が終わりました」
「あら、ありがとね。今日はもうやることも無いしゆっくりしておいでよ」
「ありがとうございます」
あれから宿屋に暫くお世話になり、おばさまのお手伝いをして過ごす様になった。もうじき海の男コンテストが開かれるということで、そのお手伝いもしている。
「そういえば聞いたかい?」
「どうかしたんですか?」
「なんでも海の男コンテストにデルカダール兵が派遣されるって噂だよ。悪魔の子が来るかもしれないって言ってね」
「…!」
関係のないダーハルーネにまで兵を送るだなんて。デルカダール王は何としても悪魔の子を捕らえたくて仕方がない様だ。
「すみません…何も聞かずに、デルカダール兵が来たら此処で匿って頂けませんか」
「やっぱりあんたに関係があったんだね。まぁ構わないさ。安心しな」
「ありがとうございます、おばさま。屋内でのお手伝いなら任せて下さいね」
「あいよ」
勇者と一緒にいたものだから、きっと私の顔も割れてしまっていることだろう。今すぐ別の国へ行くにも準備には時間がかかるし、都合よく船が出るわけでも無い。ほとぼりが冷めた頃に何食わぬ顔でダーハルーネを離れるのが正解だろう。無理に今此処を離れては足がつく。
「デルカダールも昔はこんなに強引じゃなかったんだけどねぇ…いつのまにか悪魔の子を追いかける様になっちまったのさ。今のデルカダール王は大切な何かを忘れている様な気がするよ」
「私も…そう思いますわ」
箒を片付けながらおばさまに答えた。勇者という存在は良くも悪くも人の目を集める。どうして16の少年がそんな大きな使命を背負わなければならなかったのか。私には分からない、けれどイレブンさんでなければならない理由があったのかもしれない。
「大変だよ!」
「どうしたんだい?」
「明日にはデルカダール兵が来るって!」
「行動が早すぎる…」
明日からずっと宿屋で生活することになる。なるべく部屋から出ずに、静かに日記でも書いていよう。