第2章 悪魔の子

ここは城の中、いくらなんでも兵士の数が多すぎる。

「城の外に出られれば勝ちなんですが…いかんせん地の利がありません。どうしましょう…」
「勇者と魔王は表裏一体！早く捕えよ！」

何を言っているのか。純粋に考えれば全く逆の存在と入れるのに。

「我が王はあの様に聡明なお方」
「馬鹿すぎて反吐が出ますね。そんな浅はかな考察で聡明？聡明という字に失礼です。今一度辞書で確認してみてはいかがですか」
「小娘…！その言葉、万死に値する！その娘も捕えて地下牢へ！」

絶対に逃げ切らなければ…。おばさまから頼まれたんだ。勇者を守る様に言われたのだから、私はその使命を全うするまで。宿とご飯代位は返さないと。

「何も知らないくせに…悪者扱いして…最低よ。聡明な王と聞いていたのに、がっかりね！」
「シエラ！これ以上逃げ回ってもキリがないよ！」
「その様ですね…。どうにかしないと…」

そう言って退路を探す為に後ろを振り向いた瞬間に矢がイレブンさんに向かって飛んできた。

「危ない！」
「っ！」

イレブンさんを壁へ突き飛ばしたは良いけど、代わりに自分が被弾してしまった。

「シエラ！」
「私の事は良いですから！にげ…」

この矢…毒だ…！もしかして、最初から私達を殺すつもりで…！

「ゲホッ…うご…かない…」
「シエラ！目を覚まして！」
「ごめ、んなさい…守れなかった…」

兵の駆け付ける音。でもイレブンさんに矢が飛んで行かなくて良かった。お姉ちゃんを助けられなかったのは残念だけど…人の為に死ねるのなら、神様もこんな酷い妹を許してくださるでしょうか。

「捕らえろ！」

兵の声と共に私の腕が拘束されていくのが分かった。旅の中の経験のおかげで毒には多少耐性があるけれど…もうそろそろ意識がなくなる。そうなればいよいよ本格的に死ぬだろう。

「その女の毒を解除しろ」
「はっ！」

どういう事？このまま殺す気はないという事？わざわざ公開処刑でもする気なのだろうか。

「いっ…」
「せいぜい大人しくしておくんだな」

毒を解除し、矢を抜いた兵士を睨みつけた。地下牢になど行ってしまえばもう後は死を待つだけ。最後にちゃんと兄と話をしておけば良かったと後悔した。でも、自業自得なのだ。自分から兄の事を避けていたのだから。あれこれと考えているうちに、峰打ちで気絶させられた。