第2章 悪魔の子
「もし、そなたが本物の勇者であるならば、おそらく手の甲にアザがあるはず」
イレブンさんが恐る恐る王にアザを見せた。嫌な予感が絶えない。警戒していると、デルカダール王が不意に立ち上がった。
「うむ、そのアザこそ勇者の印!そなたこそ、あの時の赤ん坊…。皆の者よ!喜べ!今日は記念すべき日!ついに伝説の勇者が現れたのじゃ!」
王は両腕を高く挙げ、いかにも嬉しくて仕方がない様子。兵士も同様に喜びを表していた。
「…ときに勇者よ。そなたはどこから来たのだ?そなたをここまで育てあげた者に礼をせねばならん。教えてはくれぬか」
「…イレブンさん。」
「何?」
「言わない方が良い…と思うのですけど」
「折角礼もしたいって言ってるし、大丈夫じゃないかな」
「そ、そうですか。イレブンさんがそう言うなら…止めません」
これ、所謂お礼参り的な感じのやつでは?って思って口を挟んだが…イレブンさんは王を信じて疑わない様子。まぁ…そうよね。私が人を疑いすぎるだけなのかもしれない。
「成る程な…」
王は智将と顔合わせ、イシの村について話し合っている。これは…危ない。そして話し合いが終わったのか、ホメロスは謁見の間から出て行く。その瞬間、英雄グレイグがイレブンさんの前に立ちはだかった。私も嫌な予感がしてその間に割り込む。
「まさか一人で乗り込んでくるとはな…。何を企んでいるのかは知らんが、貴様の思い通りにはさせんぞ!勇者め!」
「言っている意味がわかりませんわ。つい先日成人したばかりのこの人になんの悪事ができると言うのです」
「そこを退け、少女よ。そこにいるのは恐ろしい勇者だ!」
「いいえ。恐ろしくなどありません。勇者の生い立ちも知らず勝手に捕らえようとする者どもの事など、聞くつもりもありませんわ」
先程新調したばかりだが、よく手に馴染むレイピアだ。握りしめて、いつでも対応できるように体制を取った。その瞬間に兵士が取り囲む。
「グレイグよ!その災いを呼ぶ者を地下牢にぶち込むのじゃ!」
「させません…!イレブンさん、下がって。私がなんとかしてみせます」
「そんな小さい女に何ができる!」
「舐めないで。これだから…大人は嫌いなの。はぁっ!薔薇十字!」
一瞬で剣を抜き、十字に剣を割いて道を開いた。
「なっ!」
「イレブンさん、こっち!」
「…うん!」
「逃がすな!」