第9章 桃色の砂浜
「あ……みて」
浜辺のアーチ状の洞窟から三日月がみえ、
海の色を映したようなビビヨンが
羽をやすめている。
「月を見るとね、ゲンガーを思い出すの」
レナの手のひらがいつもとは違う
柔らかな動きで俺の頬を撫でた。
今、なぜか俺はレナを食べてしまいたい
衝動にかられていてそれ所ではない。
あの実、……相当にやばいやつだ。
俺なんかがレナに噛みつけば
簡単に食いちぎってしまうだろう、
背中がヒヤリとする。
解決策もわからないまま、
とにかく浜を歩いていくが
そこは行き止まりだった。
途方にくれた俺の頭上を
沢山のビビヨンたちが舞う。
ああ……、これか。
俺が見せたかった景色は。
研究所で見かけた写真を思い出す。
ちら、とレナに目をやると
美しい光景に目を奪われたまま
その瞳に月を閉じ込めていた。