第19章 利害と信頼/ユナイト編4
そう、なんでもない。元に戻るだけ。
あったものは失ってない。
指輪をはめた手を
確かめるように握りしめた。
「ホテルに戻って片付けをしなきゃね」
「ゲン!」
思えば博士と違って
私はここに休暇にきた筈だった。
カメラは置いていかないとずっと
仕事しかしないんじゃない?と
博士に笑われて置いてきたのだ。
リタ達も夏休みの間だけ、
研究所に来て知り合いになった。
きっとリタも帰る日には
こんな気持ちだったのかもしれない。
束の間の時間で夢のようだとしても
やはりそれは、寂しいくらいには、
私にとってかけがえのない時間なんだ。
それを失って帰るのは
この幸せを切り離すのは惜しい。
だからこそ失わない大事なものを
大切にするのかもしれない。
「帰ったら海に行こう、ゲンガー!
エオスとの生態の違いを撮影して
博士を驚かせよう!」
「ゲガ?ゲンガー!」