第9章 桃色の砂浜
暫く日が落ちるまでそうしていた。
人間ってやつはどこもかしこも柔らかい。
ひ弱なのにこんなに柔らかくて
天敵に狙われたりしないのだろうか。
「あ、みて……」
レナが声をひそめて指をさす。
そこにはピカチュウが2匹、
仲が良さそうに浜辺を歩いていた。
あれは、いわゆる番ってやつか。
野暮なことにレナは興味津々
といった様子でカメラを向けている。
「……ゲーン」
「なにその呆れた目は」
むう、とグレッグルのように
頬をふくらませた。
人間の頬もふくらむのか、とつまむ。
ぷす、と空気を抜かれてしぼんだ。
「……あ!行っちゃう」
「ゲンガッ……」
「大丈夫大丈夫、行こ!」
俺が止めるのも聞かずにレナは
ピカチュウたちを追いかけ始めた。
なんだか妙な空気を感じて辺りを見渡す。
寄りそって眠るナッシー、
2匹で跳ねるマーイーカ、
アシレーヌを見つめるザングース……。
なんだかやたらと番が多くないか……?