第5章 すてきなあくむ
ゲンガーが少し離れた所に現れる。
立ち上がってそちらに手を伸ばすも、
やはりゲンガーは後ろに下がった。
……なによ、自分で呼んどいて。
「逃げないで」
完全に手が触れた。さっきより冷たくない。
それでも手が触れた場所からどんどん
体温が奪われていくのが分かる。
なぜ私は、呼ばれたんだろう。
体が冷たくなっていくのも心地いい。
寄りかかり目をつぶってしまえば
まるで夢に落ちる前の微睡みのように
意識が
次に気がついた時にはすっかり
体が暖まっている事に気がついた。
これは……?フワフワで
ピンク色の何かに包まれている。
「ピッ?」
……これは、愛らしいつぶらな瞳、
小さな手のひら、可愛らしい声。
ピッピだ。人形じゃない。