第5章 夢の行方
(五条先生…?)
「ビンゴ!すぐ助けるよ、鈴!」
五条は弱々しく視線だけを動かした鈴にグーサインをしてみせると、余裕の笑みを浮かべながら、老婆たちの前に立ちはだかった。
「五条、悟…!!」
「よくも僕の大事な生徒に手荒い真似をしてくれたね。覚悟はできてんだろうな!」
突然の五条の登場に驚いたのは老婆や男たちも同じだった。
それでも果敢に五条に襲いかかろうとした男たち。
次の瞬間、手足がぐにゃりとありえない方向に曲がって血が噴き出る。彼らは断末魔の叫び声を上げると痛いと連呼しながらのたうち回った。呪詛師に手加減なんて必要ない。
「うわ、逃げ足早いな。あの婆さん」
五条が気がつくと、ほんのわずかな隙にあの老婆はどこにもいなくなっていた。
男たちをぐちゃぐちゃと踏みつけながら、玄関近くの柱に身を預けていた鈴にそっと近づく。
「鈴、大丈夫?」
気絶しているのか固く瞳は閉じられ返事はない。両手でそうっと抱き上げて、五条は建物を見上げた。
「さて、恵の方はどうかな?」
࿐༅
二手に分かれて、勝手口から2階に侵入した伏黒は首を捻った。
鈴は居らず、呪符でぐるぐる巻きにされた呪詛師二人が床でもがいていた。
ここにも活躍の場は用意されてなかったらしい。
「クソッ!お前あのガキの仲間か!?婆ちゃんが傷ひとつつけるなって言うから…!」
「返り討ちにされたのか?…蓮見に?」
第三者が存在していないのであれば、鈴が呪詛師を拘束して逃げ出したとしか考えられない。
けれど鈴が呪符を扱えるなんて信じたくはなかった。大体訓練も受けてない素人に扱えるものではない。よっぽど、才能がないと。
(報告したくねぇな……)
伏黒は深いため息を吐いた。