第5章 夢の行方
ぽかぽかと気持ちのよい小春日和。学校の屋上で帆花と絵里奈とおしゃべりする。
いつものことなのに、二人と話すのはこんなに楽しかったっけ?
楽しくて嬉しくて、いつもよりたくさん笑った。
「で、鈴、どうするの?」
「どうするのって?」
「だから、早く伏黒に告白しないと!卒業したらもう会えなくなるかもしれないんだよ?」
卒業式まであと数日。受験はとっくに終わって、後は合否を待つばかり。
「でも…、面と向かうとやっぱりなんて言ったらいいか…。緊張しちゃって」
「鈴には手紙とかがいいんじゃない?」
「手紙も、後まで残るんだよ?もしダメだったら相当恥ずかしいよ…」
「そうねぇ…」
二人とも私のことを真剣に考えてくれている、大好きな親友たち。それが嬉しい。
その時、ドアの方でガチャガチャと物音がして、錆びた音が響く。
屋上につながるドアを開けて入ってきたのは伏黒で、先客がいたのかみたいな顔で三人を一瞥すると、屋上の隅にどかっと座った。
「伏黒、昼休みもう終わるのに、掃除の時間さぼるつもり?」
「ああ」
呆れ顔の学級委員長の絵里奈だったが、帆花がねぇねぇと耳打ちした。
「鈴、もうここで告白しちゃいなよ」
「えっ!?む、無理だよ…」
「だって言わずに卒業したら、一生後悔するかもしれないよ?」
࿐༅
(一生、後悔するかも……)
目を開けるとぼうっとぼやけて見える視界に、心配そうに覗き込む伏黒の顔が映る。
伏黒くんがここにいる。まだ夢の続きかな。
(言わないと、好きだって。もう会えなくなるかもしれないから。夢の中だから、フラれたって平気…)
「伏黒くん…」
名前を呼ぶと、彼の青みがかった瞳が不安そうに揺れた。
「蓮見、昨日のことを謝ろうと思って…」
昨日?なんだっけ?
そんなことどうでもいいの。
「私、伏黒くんが好きです……」