第5章 夢の行方
目の前に腰の曲がった小さな老婆はしわくちゃな顔でにやりと笑った。まるで山姥みたいだ。
弱々しそうなのに気配は禍々しく、何か得体の知れない怖さがあって、鈴は思わず後退りした。
老婆の後ろには数人の若い男が群れ従うように立っていて、老婆とともにじりじりと近づいてくる。
「お嬢ちゃん、こっちへおいで。何もしないからさ」
「…いやよ」
老婆の言葉なんて絶対に嘘。だからといってどうしたらいいのだろう。
「婆ちゃんの言うこと聞かねぇか!大体、見張りはどうした!?」
痺れを切らした取り巻きの男が鈴に手を上げた。衝撃でメガネが飛んで、小さな体は床に打ちつけられ、頭がくらくらして意識がもうろうとする。
「おやめ!傷物にしたら五条悟に怪しまれるだろうが!」
老婆の声が遠くに感じる。せっかく逃げるチャンスだったのに、とぼんやりした頭で考えた。
(もう高専にも戻れないのかな…)
「え、呼んだ?」
今まで気配も何も感じなかったのに、現代最強の呪術師、五条悟が老婆の背後に立っていた。