第5章 夢の行方
涙を拭いたくても両手は縛られたまま。なすすべもなく涙が頬をつたう。
(…おばあちゃん、助けて…。ここで死にたくなんかないよ……)
「……禍事・罪・穢れを祓いし、清めし、畏み畏み賜う……」
藁にも縋る気持ちで祖母がよくお祈りしていた言葉を口にすると、にょろりと鈴の上着のポケットから細長い紙のようなものが出てきた。
それはみるみる伸びて、呪詛師たちを取り囲む。
「なんだ!?まさか呪符使いか!?」
鈴は何もできない非術師。そう思って全く警戒をしていなかった呪詛師たちは一気に呪符にぐるぐる巻きにされ、体の自由を奪われる。
「え…?」
縛られていたはずの体が急に楽になって、泣き止んで目を開けた鈴はきょとんとした。
ロープは何かに切断され、呪詛師たちはぎりぎりと呪符に締めつけられて床に倒れながらもがいていた。
(なんで…?でも今なら逃げれる…!!)
ハッとした鈴は部屋を出て、近くにあった階段を駆け降りて出口を探す。
廊下に出てまっすぐ進むと玄関らしきドアがすぐに見つかった。
ここから出たらきっと何とでもなる。靴下のまま、鈴はドアを開けて飛び出ようとした。
「おや、お嬢ちゃん」
小さな希望はすぐに絶望に変わる。ドアを開けた所で拐われる直前に見た老婆と鉢合わせたのだった。