第5章 夢の行方
鈴は男たちに話しかけられても何も答えなかった。
それを見越しているはずなのに男は饒舌に話し続ける。自分たちは呪詛師。あの老婆に育てられたのだと。
一瞬見ただけだが意地悪そうな老婆だった。私のおばあちゃんとは全然違う。降霊術で利用するためだけに人を殺して肉体を奪うなんて、なんて非道な生業だろう。
呪詛師は安泰だった。五条悟が生まれるまでは。
彼が生まれたことにより、世の中のパワーバランスは大きく変わってしまったのだという。勝手気ままに自らの欲望に従い、人を呪っていた呪詛師たちは鳴りを潜めることを余儀なくされた。
それでも呪詛師たちは一発逆転のチャンスを虎視眈々と狙っていたのだ。呪術高専の周囲を見張りながら。
「呪術師は曲者ばかり。若くても才能があって強い奴はごまんと居る。でもお嬢ちゃんはうってつけだった。まだ高専に来て日が浅くて非力なあんたでも、その体を使えば五条悟にも近づけるだろうからな」
鈴は唇を噛む。反論したくても言葉が出てこない。
どうしてあの時、一人で外に出てしまったんだろう。
どうして私はこんなにも無力感なんだろう。
もういやだ、こわい。殺されたくない。
両親があんな目に遭ってまで助かった命をここで断たれるわけはいかないのに。
翡翠色の瞳に涙が滲む。
最近泣いてばっかりなのに、泣いたって何も解決しないのに。
「おいおい、泣いたじゃないか」
呆れたようにニヤニヤ笑う呪詛師の声が耳につく。悔しい、悲しい。
(助けて、おばあちゃん……)